賃貸マンションの贈与は所得税が発生する?Part2

賃貸マンションの贈与は所得税が発生する?Part1で賃貸マンションの入居者からの敷金を預かっている場合には「負担付贈与」に該当し、所得税を納める必要があると説明しました。

これは厳密にいえば、不正解となりますので今回は「負担付贈与」に該当した場合の所得税の課税関係について説明していきたいと思います。

 相談事項

私は息子に対して所有している賃貸マンション(時価3,000万円)を贈与しようと思っております。
賃貸マンションの賃借人から預かっている敷金は300万円ですが帳簿価額が以下の場合で取り扱いは異なりますか?

①帳簿価額    200万円
②帳簿価額 1,000万円

 回答

①の場合は、負担額である敷金から帳簿価額を差し引いた100万円に対して所得税が課税されます。

②の場合は、負担額である敷金が時価の2分の1未満(300万円<3,000万円×1/2)で譲渡損失が生じるため、譲渡損失はなかったものとみなされ所得税の課税はありません。

 解説

1.贈与等の場合に譲渡所得の特例(所法59②)

次に掲げる事由により居住者の有する山林(事業所得の基因となるものを除く。)又は譲渡所得の基因となる資産の移転があつた場合には、その者の山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その事由が生じた時に、その時における価額に相当する金額により、これらの資産の譲渡があつたものとみなす。

一 贈与(法人に対するものに限る。)又は相続(限定承認に係るものに限る。)若しくは遺贈(法人に対するもの及び個人に対する包括遺贈のうち限定承認に係るものに限る。)
二 著しく低い価額の対価として政令で定める額による譲渡(法人に対するものに限る。)
2 居住者が前項に規定する資産を個人に対し同項第二号に規定する対価の額により譲渡した場合において、当該対価の額が当該資産の譲渡に係る山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算上控除する必要経費又は取得費及び譲渡に要した費用の額の合計額に満たないときは、その不足額は、その山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算上、なかつたものとみなす。
ここで大事なことは、個人に対して著しく低い金額(時価の2分の1未満)で譲渡し、かつ、譲渡損失が生じるときにこの規定がの適用があるということです。

2.個人間の負担付贈与の課税関係まとめ

課税関係 所得税 贈与税
時価 > 負担額 > 帳簿価額 負担額 - 帳簿価額 = 譲渡所得 贈与財産の価額 - 負担額 = 贈与税の課税価額
時価、帳簿価額 > 負担額
負担額 > 時価×1/2
負担額 - 帳簿価額 = 譲渡損失
時価、帳簿価額 > 負担額
時価×1/2 > 負担額
負担額 - 帳簿価額 = 譲渡損失→なかったものとみなされる